番外編 ひみつ



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 はじめは、不可解な女だと思った。
 いつも不機嫌顔で、気を利かせて警察署から押収品を回収して渡したら、思い切り平手打ちを食らわせ(これは下着を大衆の面前でさらしたためなので反省した)、人のことをエロ神父だの暇人だのとののしり、かと思えば労働もせずにだらだらとすごし、ことあるごとに不快極まりないという視線を向け悪態をついてきた女だ。
 間違っても異性≠ニして意識したことはない。
 だらしないと思ったことはあっても、魅力的な女性だと思ったことはない。
 ジャンが古賀食堂にいるから仕方なく通い、結果、接点を持っただけの相手だ。
 ――そのはずだった。
「玲奈」
 呼びかけると小山が揺れた。
 否。ベッドの上で膝をかかえ、毛布を頭からかぶった玲奈である。
 なにが怖いのか、ぎゅっとすぼまった彼女の肩が小刻みに震えていた。
 一瞬、抱きしめたいと思ってしまった。