そして再び場所を移動して穴を掘り始めると、律儀なことに少女は距離をおきながらもついてきた。
旅人はさほど珍しくもないだろうに、何でついてくるんだろう。
変なガキだと笑ったら、すぐそこに少女の姿があった。
「なに、してるの?」
じぃっとオレの手元を見る。
オレもつられて乾ききった大地を眺めた。
「水掘ってるんだよ」
「水?」
「そう」
「……海を探しに行かないの?」
「海、なぁ」
旅人のほとんどは、海を探して旅にでる。オレはただ永遠に広がるばかりの空を振り仰いだ。
「あると思うか?」
逆に問い掛けると、少女は戸惑いながら首を傾げた。肯定も否定もできないらしい。実際に見た奴がいないんだから、確かに頷けないのだろう。そして、否定するには勇気がいる。
命の源といわれたその場所は、伝説のようにただ語り継がれるだけの場所。
「オレは、海を探すより井戸を掘りたい」
ざくりと音を立てて土がシャベルを迎え入れる。
「どっかにあるはずなんだ――水脈が。枯れてない土地が」
願いのような祈りのような思いで、大地を掘り起こす。
もうあきらめたいという気持ちと、まだあきらめられないという思いが胸の奥で交錯する。
「うん」
不意に少女は頷いた。
ちょこんと大地に腰をおろし、少女は微笑んでいた。
「うん、だいじょうぶだよ」
小さな手がいたわるように大地に触れる。
それを見て、ただ無性に泣きたくなった。