真っ青な空を見上げ、カラカラに乾いた空気を肺から吐き出した。
 ぬけるような空には雲ひとつなく、代わりにいやに大きな太陽と白い月が静かに浮かんでいた。
 荒野を歩き始めて十日目の朝。
 ……オレ、死にそうなんですけど。
「あのクソジジイ、地図間違えやがったな」
 貴重な食料と交換して手に入れた地図は、黄ばんでバリバリ音がする。オレといっしょでずいぶん渇いているらしい。
 もう汗も出やしねーぞと心の中で毒づいた。口を開くとそれだけで水分が蒸発していく。
 燦燦さんさんと太陽が照りつけるなか歩きつづけ、関節が悲鳴をあげているのがわかった。
 ここで倒れたら間違いなく死ぬな。
 短い人生だったなぁと皮肉に笑いながらも、まだ死にたくないとでも言うように足が前に出る。無意識にフードをかぶりなおし、防護マスクを固定した。
 体に染み込んだ一連の動きがオレの命をつないでいる。
 ああ、これじゃとうぶん死ねないじゃないか。
 食料も水もないってのに、この荒地でどうやって次の町を探せばいいんだよ。
 見渡す限りの平野に苛立ち以上の焦燥感がつのる。
 溜め息をつこうとして、オレは息を止めた。
 はるか前方――
 ゆらりと、町が揺らめいた。

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