教室に行って、誰かに助けを求めよう。こんな追いかけっこをしていたら身がもたない。
……自分から仕掛けてしまったことを後悔しながら掃除道具入れから出て、そっと廊下の様子をうかがう。
「おい、あのふざけた奴見つかったか!?」
「こっちにはいないぞ!」
「畜生、においはここら辺なんだけどな……もう一回、しらみつぶしに捜すぞ!!」
……に、においか! においで追ってるのか! だからああいう特殊能力系は嫌いなんだよ!!
壁に貼り付き、まずい相手に喧嘩をふっかけたことを改めて痛感する。バタバタと走り回る足音が遠ざかった隙に教室を出て、一室一室、窓から中を確認し女子生徒を発見して飛び込んだ。
助かった!
……って、男は敵か味方かわからなかったから女子を捜したんだが、よく考えてみたら女子は戦力外じゃないか?
「なんか騒がしいなあ」
つまらなさそうにそう口にしたのは広い教室に一人だけ残っていた桃子だった。
よし! 助けにはならない!
自力でなんとかしよう!!
「男ども、なんかやってるの?」
ちらりとこちらに視線をやった桃子に尋ねられ、何かが吹っ切れて思わず笑顔になる。
「うん。命懸けの追いかけっこ。じゃあこれで」
教室を出て、足音を聞くたびに教室だのトイレだの準備室だの空き部屋だの、あらゆる場所に身を隠す。移動すればするほど彼らは混乱するようで、意外と上手く逃げられる。
ただ問題は、一階に行かなきゃいけないのに上へ移動してるってことだ。これじゃ追いつめられるだけだなと溜息をつくと、
「おい、もう校舎の外なんじゃないか?」
誰かの怒鳴り声が聞こえた。
「まさか」
「いや、ありえるかも。手分けして捜せ」
騒がしい足音が階下から響いてすぐに校庭に人影が現れた。窓辺からそれを覗き、ほっと息をつく。鼻はいいが頭は悪かったらしい。――よかった、ご同類で。
それじゃあお姫様捜しを再開するか――そう考えたとき、何かが視界を横切った。