「誰かー! いませんかー!!」
鬱蒼と生い茂る木々に向かって叫んでみたが、声はわずかに反響するだけで、かろうじて返ってきたのは木々のざわめきと鳥の鳴き声だけだった。
やばい。どうしよう。これっていわゆる迷子っていうやつ? 戦う前から敗北してませんか。それに、 だいおうさま がいるなら、勇者の剣とかナントカソードがどこかで手に入ると思ったから、武器なんて何も持ってきていない。こんなところで敵に出くわしたらまず間違いなくやられてしまう。
これは絶体絶命のピンチというものなんじゃないのか。とりあえず枝でも拾って武器がわりに……うわぁ、指先で簡単に折れそうなほど素敵な武器!
そ、そうだ、石なら武器になる。どこかに石は、石は、……あれは何トンくらいあるのかなぁ、アレ持ち上げたらギネスに載せてくれるかな。
いやそれ以前に、あれが持ち上がるなら だいおうさま に余裕で勝てそう。
背丈以上の巨石を眺めて溜息をつく。足元を探ってみたが、小石の類は落ちていなかった。
「だ、誰か、味方はいませんかぁー」
無差別に呼ぶから敵が出るに違いない。ここは建設的に味方を呼べばいい。
意を決して味方の二文字に力を込めて大声で呼ぶと、途端にがさがさと音をたてて背の低い木が揺れ始めた。
うあー! 来た! なんか来た! 敵がーーーー!!
「誰だ?」
目をつぶって枝をぶんぶん振っていると、落ち着き払った声が聞こえてきた。そっと目を開けると、銀髪に紺碧の瞳を持った、えらく派手な青年――エディウスが立っていた。服のいたるところに枯れ葉がついているその姿はちょっと間抜けで、警戒心は一瞬で吹き飛んだ。
「よかった! すみません、道に迷っちゃって!!」
「奇遇だな。私もだ」
「つ、使えねー!」
ああ思わず本音がっ!
しかし彼は別段怒るそぶりも見せず、辺りを見渡した。何かを探しているような仕草だ。
「今日の野宿はこのあたりにするか」
「って、何日迷ってるんスか!?」
乱れた敬語は十八番。うっかり口から滑り出した質問に、彼は真剣に考え込んでしまった。ああこれは、相当……相当、迷っていらっしゃるに違いない。ちゃんと家に帰れるのか心配になってきたなぁ。
あれ? そういえば何しにこんなところに来たんだっけ? すごい重大な任務があった気がしたんだけど。
えーっと、うーんと。
……まあいいや。とにかく今は自分が助かることが先決だよね。
考え込むエディウスを見ながら脱力してその場に座り込む。サバイバル生活の幕開けだ。
=『迷いエンド』了=