『マイラの思惑』

 マイラの趣味・特技は裁縫である。
「金髪、金髪ーっ」
 子どものころに出会ったエダは、絵本から抜け出したかのような容姿で、すぐさまマイラを夢中にさせた。柔らかな金糸の髪に透き通る白い肌、ふっくらと形のよい唇、可愛らしい鼻、そして極めつけはあの蠱惑的な紫の瞳――マイラのお気に入りだ。学校へ入ると寄宿舎で寝起きするようになり、手紙しか送れず、彼女は意気消沈したものだった。
 大きくなったら店を持ち、服を作るのが夢だった。最初の一着はエダのドレスだと心に決めていた。
 しかし、意外なタイミングでチャンスが到来した。
 マイラはテーブルの上に上等な布を広げ、鼻歌交じりにハサミを入れる。
 エダの服、ミスティアの正装。
「とびきりの一着を作っちゃうぞー」
 久しぶりに会ったエダはやっぱり可愛くてマイラをご機嫌にする。しかも今回は、エダの服ばかりではない。ライハルトの服も作れるのだ。近所では有名なブラコン少女は、裁断室に集まり自習をしていた訓練生たちの怯えたような目すら気づかずに有頂天だった。
 鼻歌は途切れることなく、軽快なハサミも迷うことがない。
「兄さまとエダ、結婚してくれないかなあ。そうしたら私、大好きな二人とずっといっしょにいられるのに」
 自慢の兄と大好きな親友が夫婦になったら、こんなに幸せなことはない。
 マイラは手を止め、兄と親友が手製の婚礼衣装で式を挙げるのを想像してうっとりとした。
「いい! 絶対いい!! 国中の生地を集めて、最高のドレス作っちゃうーーー!!」
 い・やーん、と彼女は照れて悶えながら絶叫した。
 彼女のテンションは、まだまだ上がる。

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