あそこに超絶に怪しい人影が!! 派手なマントにベレー帽もどき、カボチャパンツに白タイツ、あれは誰がどう見ても変態だ――!!
……もとい、セリゼウスだ。どうしてこんな所に、ってそんなことどうでもいいか。ああ、放っておきたいなあ、関わりたくないなあ。でもこのままにしておくと、被害が拡大するんだろうな。理由はどうあれ、迷惑なヤツだと重々承知しているから見て見ぬふりもできない。
物陰からそっと奥をうかがうその姿は不審者以外の何者でもない。あれでもきっと本人は「慎重に隠れている」つもりなんだろう。あまりに熱心に見てるので、どうでもいいと思ったがその視線の先が気になって追ってみた。
泉がある。空と同じく澄んだ青をたたえた見事な泉だ。そしてそこには、惜しげもなく美しい裸体をさらし、水浴びに興じている若い女たちが――って、このエロ親父が……っ!!
うら若き女性の笑い声とは裏腹に顔が引きつっていく。
覗きかよ! いい年した大人が!
思わず拳を握って、それからはっとした。
ここは紳士的に、セリゼウスを説得してこの場から離れさせるのが最良だよね。本気で関わりたくないタイプだけど、勇者の名目で行動してるんだから名に恥じぬようにせねば。
「せっちゃん」
警戒を避けるべく親しげに声をかけると、振り返った彼はさも変人が来たと言わんばかりの表情をした。
うわー心外。なんかムカつく。しかし、気を取り直して笑顔を作る。
「何してるの?」
「貴様のような下郎には関係ない」
ム・カ・つ・く。エロオヤジの分際で生意気な!!
いや、駄目だ。落ち付け自分。勇者様は怒ったりしないんだ、冷静になれ。相手のペースに乗せられるような未熟者がお姫様を無事に助けられるはずがない。
引きつり笑顔を浮かべながらもう一度質問する。
「そう言わずに教えてくれてもいいんじゃないかなー?」
「去れ、ゲス」
「……そういわずに」
「くどいぞ、カス」
「セリゼウス」
「気安く呼ぶな、下等人種」
「……」
よし、決めた。いま決めた。こいつが だいおうさま だ。誰がどう言おうと だいおうさま だ。さっさと退治しよう。
ふたたび奥を監視し始めたセリゼウスの背に微笑みかけて、遠慮なく剣を抜いた。
あとのことなんて知るものか。
=『泥沼エンド』了=