ハイリスク・ハイリターンという言葉がある。この場合は苦難の道に進んでこそ意味があるんじゃないか。
「え? だから特別棟は危ないって」
「大丈夫! ありがとう、諸君! またな」
キメ台詞を口にして止める声を振り切って歩き出す。くううううーーー格好いい! これぞ漢! 漢の中の漢!!
と、自分自身に感動して十三歩目で床にあいた穴に落ちた。
って、ええー。ここ一階なのになんで穴が開いてるんだよ! それ以前に、まだ特別棟に向かう途中じゃないか!
「うわ、いきなり落ちた。生きてるかー」
生きてるよ。痛いけど。
駆け寄って穴の中を覗き込む男たちを声もなく睨む。にしても、結構深いな。なんの穴だ、これ。わざわざ掘ったみたいな洞穴だな。……あ、手になんかあたってる?
持ち上げてみると、布切れだった。それもずいぶん古く、簡単に破れてしまいそうなものだ。
「そこ防空壕の跡地ー。いまから先生呼んでくるからちょっと待ってろよー」
「おい、足が変なほうに曲がってなかったか?」
「タンカ出してもらえ、タンカ」
「救急車の手配もいるだろ」
「こっちから運んだ方が早くないか?」
「運べるならいいけど、難しいんじゃないか? 左腕もヤバそうだ。」
……あの、すみません、聞こえてるんですけど。腕ってそんな失敬な。すっごい普通に使ってるじゃないか、……あ、これ右だ。左は……こ、怖いからこのままにしておこうかな。足も動かせそうな気がするんだけど、やっぱりやめておこうかな。
「動くなよ!」
ういーっす。っていうか、なんか動けません。タンカを待っているあいだ目を閉じると、遠くでなにやら怒鳴る声が聞こえた。
やっぱり人の忠告は聞いておくべきだな。
薄れゆく意識の中で、実に呑気にそんなことを考えていた。
=『茨の道エンド』了=