漢なら己が信じた道を突き進むのみ!
 この先にお姫様がいるはずだ! 荒野を突き進んだこの先に!
 とはいうものの、意気揚々と荒野を進んでみたが、行けども行けども風景に変化はない。まさに不毛の地帯だ。遠くに木が何本か見えるのだが、変化といえばそれが近づいたくらいか。
 一時間ほど歩いたとき、嫌な考えが脳裏をかすめた。
「まさか、迷った?」
 慌てて背後を確認して、それからぐるりと四方を見渡し、どこもかしこもさほど代わり映えしない風景であることに愕然とする。やばい、これ、本格的に道に迷った……いやこの場合は遭難に近いかもしれない。こういうときには文明の利器、携帯電話が役に立つ!
「いでよ、奥儀!!」
 シャッキーン、とわざわざ自分で効果音まで入れてテンションを上げ、携帯電話をポケットから取り出した。そして画面を確認する。そこにはしっかり「圏外」の文字が刻まれていた。
「使えねー! テンション上げろよ、文明の利器! こういうときしか役に立たないだろ、友達少ないんだから!!」
 どうでもいいことまで暴露して、携帯電話をぶんぶん振った。しかしやっぱり、画面は無情にも「圏外」の文字を刻み続けている。
「役立たずー!!」
 きーっと騒いで力任せにぶん投げると、携帯電話はきれいな弧を描いて、ガツンと近づいてきた人影に命中した。
「うおお! 人!? すみません!!」
 しゃがみこんだ相手にぎょっとして駆け寄ると、額を押さえたイナキ少年が上目遣いに睨んできた。
「ご、ごめんなさい」
 いきなり現れたお前が悪いんだと言える雰囲気じゃない。素直に謝罪すると、イナキは押さえていた額から手を放した。ああ、赤くなってる。痛そうだな。
「道に迷って、むしゃくしゃしてて」
 素直に伝えるとイナキは辺りを見渡して、ふっと息をついた。それからすぐに落ちていた携帯電話を拾って汚れを落とし、差し出してくる。
「ありがとうございます」
「……ここら辺でダリア見なかった?」
 質問されてきょとんとしてしまった。
「ダリア? 見なかったけど」
「そうか」
「どうかしたの?」
「……ちょっとケンカして」
 ああ、痴話喧嘩というやつか。若いなあと感心していると、気が気じゃないのかイナキはすぐに歩き出した。よほど心配なのだろう。一緒にいるときは突き放すことも多いのに、こういうときにはちゃんと相手を捜すタイプらしい。
「手伝おうか」
 迷ってる人間が言っても全然ありがたくないだろうが、イナキは少し驚いたように目を見張り、それからかすかに笑みを浮かべた。
「うん。よろしくお願いします」
 ということで、お姫様をあきらめて魔王様を捜すことになりました。

=『ほのぼのエンド』了=


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