怪しいは怪しいが、いきなり危険な道を行くこともないし、ここは安全な順路で攻めよう。まず中央棟からだなー。しかし、どんな台風が来ればこんなふうになるんだ。鉄骨見えてるじゃないか。壁はへこんでるし、穴は空いてるし、窓ガラスなんて三枚に一枚の割合で割れている。
 だいおうさま って強いのかな。こんな所にいるんだからきっと強いんだろうな。
 お姫様だけ上手に救出して逃げられないだろうか。
「うーん。でも難しいかなぁ」
 まずは三階から、と思って階段を登り、長い廊下を考え込みながら歩いているとがくんと体がゆれた。
「え? あれ?」
 体が前のめりになる。とっさに下を見るとそこには床がなく、足は完全に空中に放り出された状態だ。
 ――いや、放り出されてるのは足じゃなくて体か。
 階下の床に赤いシミがついてるのを見て顔をそむけると、落ちかけた体が大きく揺れ、腹部に圧迫感が加わる。床を向いていた顔がぐるりと反転、天井へとむけられた。
「っ!?」
 背中に鈍い痛みが広がり息をつめると、
「大丈夫か!?」
 焦りを含む声がじかに背中に響いた。
「校舎内は歩かんほうがええ。復旧作業の予定もたたんくらい壊れとる」
 拍子っぱずれの関西弁もどきが耳朶を打つ。体全体を使って、落ちかけた自分を助けてくれたのは光晴だった。た、助かった! 落ちたらヤバイ。あれはマジでヤバイ。あの赤いシミ、なんかもう、不吉以外のなにものでもない。
「ありがとうございました」
「怪我は?」
「大丈夫です!」
「そっか。じゃあ、ここ危ないから早く帰るんやぞ」
「そうします!」
 だいおうさま も怖いが、こんな半壊した場所で探索なんぞできるか――!! 自分の命が一番大事なんだ。
 お姫様、ごめん! 縁がなかったと思ってあきらめてくれ。
 じゃあそういうことで帰ります。

=『ヘタレエンド』了=


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