こういうひねくれた奴には話し合いなんて無意味だ。ぐるりと部屋を見渡してそこにお姫様の姿がないことを確認し、――武器があるのを発見する。武器といっても掃除用のホウキなんだけど、素手よりリーチが伸びるぶん有利になるんじゃないかと思って駆け寄って手に取った。
それで何をする気だ、と言いたげな響の視線がとても痛い。しかし、ひるんでる場合じゃない。
「お姫様の居場所を吐いてもらおうか!」
武器を得たことで少し気持ちも大きくなって、ふふんと鼻を鳴らしながら請求してみた。……当然、響はまったく動じない。それどころか怪訝な表情までしている。
相変わらずムカつく男だ。
「素直に吐かないと痛い目を見るぞ」
ホウキをぶんぶん振って脅しても、響は変わらず怪訝な表情をしている。怯えろよ、ちょっとくらいは! 付き合いってものを知らない男だな!
「何やってるんだ?」
響の質問に気が抜けた。
「だからーお姫様を捜しに来たって言って」
そこまで言ったところで部屋のドアが開き、桃子が現れる。彼女は中をのぞいてきょとんとした。
「どうかしたの?」
ホウキを持って情けない格好でいる部外者と、それを飄々と眺める学校関係者――なるほど、確かにおかしな組み合わせた。響はふいと視線を逸らした。
「別にどうでもいいだろ」
「……またなんかやったの?」
「人聞きの悪いことを言うな」
「日頃のおこないが悪いんじゃない。どうしたの?」
はじめの言葉を響に、続く言葉を部外者に投げ、彼女はこちらを見る。
「いや、ちょっとお姫様を」
「お姫様?」
「……ゆ、行方不明者を捜してて」
桃子があまりに真剣な表情で訊ねてくるので真実を語ろうといったん口を開いたが、 だいおうさま や、お姫様、勇者にこれっぽっちも信憑性がないことに気づいて当たり障りのない返答をしてしまった。
……でも、いるはずなんだけどなあ、お姫様。
「んー? もしかして探偵さん?」
「いやいや、ボランティア」
世界の平和のために粉骨砕身している己の姿に苦笑して告げると、桃子はへえと声をあげた。……信用してくれたらしい。
「じゃあ人捜し、手伝ってあげる」
「おい桃子」
「あんたも暇でしょ? こんなところで遊んでないで働きなさいよ」
……。
……!! も、桃子ってもしかして怖いもの知らず? あの響に向かって顎で指図し、しかもしぶしぶながら従わせている。すごいな、この二人の関係も謎だ。
「いいー? サボっちゃ駄目だからね!!」
仕方なく部屋を出て行く響に向かって念押しまで……!! 彼は廊下でいったん足を止め、肩をすくめて歩き出した。わあ、こんなところに猛獣使いがいたなんて知らなかったなあ。
これはぜひ弟子入りさせてもらわねば。
「先生と呼ばせてください」
喜々として話しかけると桃子はまたきょとんとする。
「ぜひ弟子にしてください!」
「弟子ってなんの」
「ぜひ弟子に!!」
「……別にいいけど?」
「ありがとうございます!!」
響を
そんな理由から桃子の元に弟子入りした。
もう少し待ってろ、 だいおうさま !!
=『他力本願エンド』了=