あそこにいるのはミヤツ刑事!! ちょうどいい!!
「ミヤツ刑事、ミヤツ刑事!」
 大声で呼ぶと、いつもどおりだらしない服装をした彼は、ん、と声をあげて首をひねりこちらを見た。
「警察署に入りたいんですけど!」
「警察署?」
 怪訝な顔をされてはっとした。いきなり行きたいと言い出すのはさすがに怪しくないか。お姫様が捕らえられているかもしれない、なんてミヤツ刑事に言ったら、仕事に並々ならぬ誇りを持っている彼を怒らせてしまうかもしれない。そうなると、話がややこしくなることも考えられる。
 うーん。どうしようかなあ。
 あ、そうだ。
「将来、刑事になりたいんで警察署を見学したいんです!」
 ナイスアイディアーー!! そうそう、これなら怪しくない!
 どうだ、これで完璧だろうと返事を待つと、にっと彼が気のいい笑顔を見せた。
「いい心がけだな。今日は式典の警護要請で一般人は出入り禁止なんだが、特別に案内してやろう」
「ありがとうございますー!!」
 やったー! 式典!? なに、それってめったにお目にかかれない裏舞台!? すっげーラッキー!?
 小躍りしながらついていくと、警察署内は驚くほど活気付いていて、警官が走り回っていた。騒がしい中、順々に部署を案内される。意外にもミヤツ刑事は警官に人気があって、いくさきざきで羨望の眼差しが向けられていた。そして自分も、押収した証拠品保管庫、資料保管庫、武器保管庫、留置所、独身寮を行く間に、すっかり警察のとりこになっていた。警察って素晴らしい。完璧な上下関係、統率された一個集団、絶大なる信頼関係の上に成立する社会、これぞわが理想とする漢の世界だ。
「お前が来るのを楽しみに待ってるぞ」
 門の前で、大先輩の顔でそういうミヤツ刑事に、ビシッと覚えたての敬礼する。
「もちろんであります!」
 よし、とミヤツ刑事に背中を叩かれ、晴れがましい気持ちで警察署を後にする。なんて有意義な一日だったんだ。そうだ、お姫様は刑事になってから捜そう。ミヤツ刑事と一緒に働けるのがいまから楽しみでならない。
 さあ明日から猛勉強だ!

=『警察署見学エンド』了=


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