じゃあ手早く質問だけすませよう。
「お姫様を捜してるんだけど、心当たりない?」
……ああ、いきなりストレートすぎるな。
「 だいおうさま がさらっちゃたみたいなんだけど」
って、これも唐突だろ。クリストルがじっとこちらを見て、ふーんとおかしな声を出している。ちょっと可哀想な子、とか思われているんじゃないだろうか。
「んー、 だいおうさま って言ったら、ぼさぼさの髪に仏頂面、よれよれのカッターシャツにくたびれたネクタイ、ねずみ色のコートを肩に引っかけた冴えないオヤジのことだろ。無精ヒゲもオプションでつくんだ。……ちょっと待ってろ」
……クリストルの説明って、なんかすごく詳細だな……。
クリストルは だいおうさま の説明が終わるなり時計塔に歩いて行き、器用にドアを開けて入っていってしまった。猫でもああいう芸当ができるのか、と一瞬感心しかけたが、あれは中身がクリストルだからなのかもしれない。
クリストルはしばらくして小瓶をくわえて戻ってきた。
レンガを敷き詰めた通路の上にそれを置き、「持っていけ」と言う。
「これは?」
「聖水」
実に自慢げな一言だ。……なぜ聖水が出てくるんだろう。それって何かの役に立つのか? でも、くれるというならもらっておくか。置いていったら期待に満ち満ちた目で見てくるクリストルにも悪いし。
残念ながらこれ以上は何もなさそうなので移動しよう。クリストルに見送られながら時計塔を後にした。